＊同済大学経済?金融系の陳飛翔主任が人民元相場上昇がもたらすチャンスをめぐり、次の論考を寄せた。

中国国民経済の総合的実力が目立って向上するのに伴い、人民元相場は持続的な上昇という段階に突入した。総合的に判断して、人民元が変動の中でますます強くなるというのは、一つの確定した潮流であることは疑いない。現実の生活の中では、人民元の不断の上昇が世界経済や中国経済の発展に与える重大な影響が初めて姿を表してきている。こうした影響は時間の経過と共に、絶えず拡大し深化するものと予想される。われわれは人民元上昇がもたらす新しいチャンスをとらえ、未来の経済グローバル化のプロセスの中で、国民経済が成長する空間をよりよく開拓するよう努力しなければならない。

短期的にみて、人民元相場上昇は確かに経済成長に一連のデメリットをもたらす。現段階では中国の輸出製品は、依然として労働力コストの低さという優位点に立脚して国際競争に参入するのが主流であり、付加価値が低いため、人民元上昇が輸出に影響を与え、さらには国民経済の全体的な成長ペースにデメリットを与えることが予想される。しかし同時に、人民元上昇によるさまざまな積極的影響も考えなくてはいけない。中?長期的にみて、人民元上昇がもたらすものはデメリットよりも発展チャンスの方が多い。人民元上昇に伴い、巨大な富が形成され、世界経済における中国経済の地位と影響力とが一層高まるだけでなく、国際間の商品?投資の流れが変わり、国内の生産資源の配置にも大きな影響を与えることが予想される。

第一に、産業のグレードアップが加速される。当今の市場経済の運営プロセスにおいて、相場の変動は国際収支バランスに影響するだけでなく、非常に重要な「価格シグナル」を提供する。人民元上昇とは、国内の各種リソース（特に土地と労働力）の価格が相対的に上昇することを意味し、これは一方では、中国の商品構造の調整や改善にプラスであり、国内の産業調整に積極的な影響をもたらす。また一方では、国際市場と国内市場との相対的価値を徐々に変化させ、国内企業をより多く国内市場に向かわせることになり、国民経済の成長が外需に極度に依存しているという局面を変化させ、より合理的な産業構造を形成するのにプラスになる。

第二に、人民元相場の上昇は技術革新を推進する。現実の生活の中では、各国の技術革新は主に市場メカニズムの調整作用に依拠しており、市場メカニズムの調整作用は主に価格の変動による「てこ」のはたらきによっている。長年にわたり、中国の生産プロセスは資源やエネルギーの消費量が大きく、特に労働力の使用量が多く、これら生産要素の価格が非常に低いことが生産の重要な要素だった。人民元上昇の結果として国内の生産資源の価格が相対的に上昇すれば、技術革新に対する市場ニーズが極度に強まることが予想される。人民元が上昇すれば、輸出製品はより多く技術革新に依拠して国際競争力を獲得しなければならなくなり、国内市場でも企業はより多く技術革新を通じて競争しなければならなくなる。簡単にいえば、人民元上昇により中国は技術革新の加速に有利な現実の市場環境を真に形成することになる。

第三に、人民元相場の上昇は国民の生活を充実させる。人民元上昇は一方では輸入商品の価格を相対的に引き下げ、海外旅行の価格などを相対的に安くする。こうしたことが国民の消費生活レベルを直接に引き上げる。また一方では、国内の金融資産の相対的な市場価格を目立って上昇させ、ここから金融市場の構造が変動し、その他の条件が変わらないとすれば、国内居住者はより大きな富を獲得することになり、さらには国内の消費需要が刺激される。こうした点の背景にあって注目すべき点、さらには戦略的意義を有する点は、人民元上昇は中国人の労働力価格を上昇させ、ひいては中国人の価値を全面的に高めるという点だ。

人民元相場の持続的上昇は、改革開放実施以来の国民経済の発展が成功を収めたことの重要な指標であり、中国の社会経済生活が重要な折り返し地点にさしかかったことを意味している。われわれは人民元上昇の消極的な面を過度に強調すべきでない。人民元相場の変動により、現実の経済局面には変化が現れており、未来の経済局面の形成にも重大な影響を与えることが予想される。現状の維持をはかることは、短期的な視点だけに立つ見方であり、やがては中華民族の長期的利益を損なうことになるだろう。合理的な選択は、中国経済の成長モデル転換のペースを人民元の上昇に対応させ、人民元上昇プロセスの中でより多くの利益を獲得するようはかることである。

「人民網日本語版」2006年11月22日