小柳秀明氏は、これまで長く中国にかかわってきた日本の環境保護専門家だ。学者肌の小柳氏は、東京大学工学部を卒業後、環境庁(今の環境省)に入り、長年にわたり環境保護に携わってきた。1997年、初めての訪中が、中日環境保全センターでの勤務となった。以降、中国と切っても切れぬ縁を結び、5年前には中国政府から「友誼賞」を授与された。(人民日報記者 于青) 小柳氏は取材の中で、中日環境保全センターについて次のように語った。 今年は中日環境保全センターの設立10周年にあたる。1988年、日本の竹下登首相と中国の李鵬首相が、日中平和友好条約締結10周年を記念して、「日中友好環境保全センター」の設立協定に調印した。日本政府が105億円の無償援助金、中国政府が6630万元をそれぞれ提供して、8年後の1996年5月、センターは完成?開業した。センター設立後、両国は黄砂に関する共同研究に着手。2001年には、日本から導入されたレーザー?レーダー機器での観測が始まり、収集した豊富なデータにより、高水準の黄砂研究が可能になった。その後、内蒙古自治区の呼和浩特(フフホト)にも同様のレーザー?レーダー機器を設置。今後、モンゴルとの国境にも、3台が配置される予定だ。これにより、日本、中国、韓国、モンゴルの4カ国による黄砂現象の観測?研究のネットワークができ上がる。さらに、▽ダイオキシン分析や酸性雨モニタリングに関する技術提携▽日本人専門家の招聘や中国人専門家の訪日研修など、交流と人材育成▽循環型経済の理念や企業内環境監督員制度の確立などの制度改善――などの面で、交流と協力を展開。両国の環境協力の窓口、拠点、情報交流プラットフォームとしての役割を担っている。 中国の環境問題の現状について、小柳氏は次のように述べている。 簡単に言えば、状況は非常に深刻だ。空気中の二酸化硫黄(SO2)濃度だけを見ても、北京は東京の6倍、重慶は8倍に達する。温家宝総理は今春の記者会見で、第10次五カ年計画の環境指標が達成できなかったことを率直に話された。中国の環境問題には、先進国とは全く違う点がある。先進国では、過去百年近くの間に、環境問題が1つ1つ順に生まれ、1つ1つ順に解決されてきた。しかし中国の場合、こうした問題がすべて同時に現れており、全面的な対応が迫られている。大気、水質、土壌の汚染など従来型の公害に加え、ダイオキシンや環境ホルモンなどの化学物質、砂漠化、生態系保護、地球温暖化などの課題が、「環境問題のデパート」の如く一挙に押し寄せている。もう一つの特徴として、どの環境問題もスケールが非常に大きい。新疆ウイグル自治区南部の塔克拉瑪干(タクラマカン)砂漠の面積1つ取っても、日本の全国土に相当する広さだ。発展途上国である中国は、環境問題に投入できる資金や人的資源は限られており、手が回らないのはやむを得ない。中国が環境保護の面で積極的に努力している点は、認めるべきだ。時が経ち、努力が続くに伴い、中国の環境も徐々に改善されるだろう。 中日の環境協力について、小柳氏は中国環境保護局の周生賢局長の言葉を引用した。周局長は中日環境保全センター設立10周年祝賀式典で「中日環境協力はすでに、両国の協力と交流の中でもっとも活発で、効果ある、潜在力の高い分野の一つになっている」と述べた。環境関連の対中円借款は約8200億円に、人的交流?人材育成はのべ4千人近くに上るという。 「日中の環境協力は規模が大きく、分野が広範に渡るだけでなく、内容が実務的で、成果も著しく上がっている」と小柳氏は述べる。また、資金面の協力が減少していることを踏まえ、今後の日中環境協力の構想を今から練っていく必要を強調。センターの今後の活動について、次の3点を提案している。 (1)日中環境協力の窓口、拠点、情報交流のプラットフォームとしてのセンターの地位をより高める。 (2)政府開発援助以外の協力の道を拡大、強化しなければならない。特に、日本の民間団体との交流を深め、持続的なパートナーシップを構築する必要がある。 (3)日中両国の環境協力組織や国際組織に門戸を開き、「環境分野の交流市場」としての役割を担う。 小柳氏は現在、政府資金に頼らず、市場取引の形を取り、持続的に発展できる環境保護プロジェクトを模索中という。 「人民網日本語版」2006年7月26日 |