「石油価格の急上昇に伴う高コスト時代がやってきた。長江デルタは、いち早くこれまでの低コスト型発展モデルから技術革新型発展モデルに転換しなければならない」と、江蘇省社会科学院経済社会諮問センターの田伯平主任は指摘している。 2006年は「第11次五カ年計画」期の最初の年であり、今年上半期の経済情勢は、ある意味で今後の経済発展のバロメーターとなる。中国の経済発展をけん引している「長江デルタ」は、急成長の成果を享受し続ける一方、石油価格の高騰で、引き続き高成長を保つにはいくらか無力感が表われ始めている。 このラウンドの世界的範囲のエネルギー価格の上昇は2001年から始まり、今年5月現在は歴史的な高位で推移している。この影響を受け、国内企業の生産コストが軒並み上昇し、今年1~5月の中国の非鉄金属価格は前年同期比44.7%、製品油価格は同26.8%、天然ガス価格は同15.8%上昇した。 統計データによると、今年1~5月の江蘇省の工業企業の原材料、燃料の仕入れ価格指数は7.5%上昇し、そのうち燃料価格は15.7%の上昇となり、工業企業の生産コストは全般的に29.8%の上昇となった。浙江省の上半期の燃料類価格は12.4%、非鉄金属材料と電線類の価格は28.5%上昇した。上海市の上半期のガソリンとディーゼル?オイル価格はそれぞれ11.1%、8.4%、化学工業材料と電気器材の価格はそれぞれ12.3%、8.1%上昇し、上昇幅は前年同期比それぞれ4ポイント、7.7ポイント高いものとなった。 石油、鉄鉱石、銅などのエネルギー、原材料価格の上昇が交通?運輸、家電製品、内装材料、木製品、電力、給水および一部の農産物?農業副産物の価格の全面上昇をもたらしている。この現象は、この10数年以来のことで、「コストプッシュ型インフレ」を誘発する恐れがある、と田伯平主任は見方を示した。 現在、長江デルタ地域の経済構造は依然として製造業中心のものであり、製品の大部分は普及型で、供給が需要を上回っているため、値上げの余地は非常に少ない。「低コスト、低技術レベル、低価格、低利益、ローエンドの市場」は大部分の企業の現状で、コスト上昇分を吸収する能力は限られたものである。江蘇、浙江、上海の3つの地域の統計データが明らかにしているように、原材料、燃料価格の上昇幅は明らかに工業製品の出荷価格の上げ幅を下回っている。 ある紡績企業の営業マンである馮瑋華さんの話によると、上流の石油価格の急騰が化学繊維など原材料価格の上昇をもたらし、工場の生産コストが約3%~5%上昇したことに加え、人民元相場の上昇、輸出税還付政策の調整などの影響を受け、企業の収益が少なくなり、かなりの受注では利益が出なくなっている。 上海の企業景気調査では、73.2%の企業で生産コストが上昇し続けており、企業経営にとって最も重要な問題となっている。第2四半期の企業生産コスト景気指数はわずか54.9で、第1四半期に比べて31.6、前年同期に比べて27.3も下落し、各景気指数の低下幅ではトップとなっている。 しかし、「高生産コスト時代の到来は、長江デルタにとって必ずしも悪いことではない」。江蘇省社会科学院の宋林飛院長は、「これは、長江デルタの発展モデルの転換を促し、産業構造調整、ハイテク産業および近代的サービス業の発展を加速させる上でプラスになる」、としている。 事実、中国の資源、エネルギーおよび労働力価格は長い間、低いレベルで推移していたため、企業は大量の資金を投入して技術改造や革新を行う必要がなかった。これからは、コストの上昇で、いくつかの技術レベルの低い、エネルギー利用効率の悪い企業が徐々に淘汰されると見られている。 上海市社会科学院の陳維研究員は、長江デルタ地域のパラダイム転換は、知識経済時代のアイディアの競争に着眼し、経済成長の基礎を資金投入の増加、資源消費からヒューマンリソースの開発およびヒューマンリソースの効率的な利用にシフトし、知的能力と革新能力を経済成長の新たな原動力にすべきであると助言している。 「長江デルタは一日も早く低コスト競争からイノベーション能力育成中心の競争への転換を図らなければならない。過渡期は少なくとも2、3年を必要とするが、カイコが糸を吐いてマユを作る前に脱皮するように、長江デルタはその高成長を維持するために必ず代価を払わなければならない」と、田伯平主任は語っている。 「チャイナネット」2006年8月9日 |