多国籍企業の中国進出に伴い、外資による国有企業買収が注目を集めている。外資による買収は中国の経済発展にどんな影響を与えるのか。

▽外資による買収は初期段階

商務部外資司の孫鵬副司長は最近、国内外の企業グループの代表らが出席した年次会議の席上、2003年に旧対外貿易経済合作部が「外国投資者による域内企業買収暫定規定」を実施して以来、外資による企業買収は規範の下で発展してきたと指摘した。

統計によると、外国企業がM&A（合併?買収）方式で中国に投資した金額は、2006年に契約ベースで 50億ドルに見たず、外資による投資全体の2.5％にすぎなかった。最も関心を集める製造業でも、同比率は2％に満たなかった。

薄熙来商務部長は「外資による中国企業買収は初期段階にある。世界的にはM&A方式による投資の割合は大きいが、中国ではまだ始まったばかりだ」と分析した。

外資による直接投資の誘致は中国の対外開放にとって重要だ。中国の外国直接投資誘致額は開発途上国で最も多い状態が続いている。外資によるM&Aは中国が国際的な産業移転に参加する道を開き、外資の利用方式を改める上で新たなチャンスをもたらしているといえる。

▽国有企業改革と経済発展に有利

商務部の廖暁淇副部長は、「外資のM&A方式による対中投資は、国有企業改革と中国の経済発展にとって有利だ。M&Aは既に国境を越えた投資の主流を成している」と現状を評価した。

統計によると、2006年の全世界におけるM&Aは総額3兆 7900億ドルに達し、前年に比べ58％増加した。また、多国籍企業の対外投資は80％がM&A方式によるものだった。

このため、商務部は外資によるM&Aが脅威に当たるかについては、楽観論を抱いている。商務部関係者は「国内の土地は不足しているが、M&A は新たな用地を必要とせずに投資目的と企業の発展目的を達成することができる。M&Aは資金や技術を必要とする国有企業改革にとってもメリットがある」と指摘した。

経済専門家は、外資がM&A方式で対中投資を行えば、国有企業の資産再編の資金不足を補い、企業構造の合理化が図られ、低効率で損失を計上する国有企業の現状改善に役立つと指摘。さらに、国際競争力の早期向上にも役立つと期待感を示した。

▽管理監督と経済安全保障

中国の政治的独立と経済の安全を守ることは、対外開放政策の基本的な出発点であり、外資によるM&Aにおいても政策上の重点となる。また、国家の経済的命脈にかかわる分野や業種に関しては外資によるM&Aを適度に規制しなければならない。さらに、外資がM&Aを通じ市場を独占することを防ぎ、市場経済の健康的発展を図る必要もある。

商務部外資研究部の金伯生主任は、「今後は従来投資を奨励していた業種で規制を導入し、外資による国家重点産業への進出を認めない。また、電力、国防軍需、石油?石油化学、重要製造業など国家の経済的命脈にかかわる業種に関しては審査を強化する」と述べた。

外資によるM&Aは産業と国家の安全にかかわることが多く、M&Aに対する監視強化も国際的な流れだ。米下院はこのほど、外資による投資案件に対する審査強化に向けた法案を可決した。貿易自由化を主張する先進国も外資によるM&Aの審査を担当する専門機関を相次いで設置している。

商務部の廖暁淇副部長は、「中国政府は諸外国と同様にM&Aに対する管理監督を強化する。現行規定を通じ、政府はM&Aが中国の健康的発展を促すことを期待している」と述べた。

外資による国有企業の買収は中国経済に災難をもたらし、中国の経済環境の不安をもたらすだろうという世論がある。

これに対し、商務部外資司の責任者は取材に対し次のように述べた。「グローバル化が進む現在、平常心とグローバルな視野で外資による国有企業買収を見なくてはいけない。外資を妖怪のように恐れる必要はないし、軽視してはいけない。まず国有企業買収に対しての研究を強化し、企業買収に関する法規、法律を整備し、産業の安全と独占の予防を確保するためのシステムを作らなくてはならない。」

国家発展改革委員会の関係責任者は「国家が、いくつかの重点業界、重点分野に対して制御能力と主導権を保持する基礎の上で、外資が合併、株式市場への参入、再投資などの多様な形式において国内企業の改革、改造に参加することは国有資産を活性化するのに有効な方法になりうる」とした。

「人民網日本語版」2007年7月31日