現在、中国の外資導入は急速な増加期を経て、安定的かつ緩やかな増加期に入っている。2006年の契約ベース外資導入額は前年の水準をほぼ維持し、今年1~4月に新たに設立された外資系企業数は前年同期比2.3%減少した。実行ベース外資導入額は前年より10%ほど増加したが、数年前の急速な伸びに比べると増加率の低下は明らかだ。外資導入のこうした流れをどのようにみるべきか。商務部研究院の沈丹陽副院長が取材に応えた。 ▽周辺国から競争圧力 ――中国の外資導入の増加率はなぜ低下したのか? 国際的にみて、現在中国が導入している外資のうち、米国、日本、欧州連合(EU)などの先進国?地域からのものは伸びが一定でない。米国の国際収支のバランスシートをみると、05年以来米国企業の対外直接投資が目立って減少しており、この年の対中投資(実行ベース)は前年比22%減少し、06年1~9月にも前年同期比14%減少した。多国籍企業の資本が米国に大量に還流しており、その流れが続く見込みで、米国の対中直接投資もなんらかの影響を受けるとみられる。同時に、新興発展途上国の外資導入力が大幅に強まり、特にインドは大幅な伸びが予想される。こうした周辺国の勃興が中国の外資導入に巨大な競争圧力をもたらしている。 国内の状況をみると、今年の中国経済の成長率は鈍化するというのが一般的な見方だが、これは経済が下向きになるという意味ではない。全体的な増加傾向は変わらないだろうし、投資環境も全体的にみて有利といえるが、ただ外資導入を制約する要素はなお明らかに存在している。第一に、コスト面での優位性が弱まっている。第二に、政府が外資利用を規範化する政策を相次ぎ打ち出したため、今年の外資による不動産投資や企業の合併買収に直接影響があることが予想される。その他、国内資本企業と外資系企業との税制度一本化政策が段階的に実施されていることから、投資計画を立てていた海外企業が様子見の態度を取るようになった。もちろん多国籍企業が一本化の進行過程で最も興味を抱くのはインフラ設備、工業化レベル、市場のキャパシティなどであり、優遇政策ではない。だから税金面での優遇政策を調整することによって外資を大きく動かすことはできない。せいぜい小規模資本が関心を寄せるだけだ。 世界的規模でみれば、国際資本の流動に大きな影響を与える要素は国内でも重視されるべきだ。そうした要素として、(1)政府の信用度、財産権の問題、法律執行(エンフォースメント)、技術レベル、文化的環境などに対する国際資本の選択権が目立って強まっている(2)財産権への投資、株式保有の要求、独資の形式がますます重要になっている(3)財政による補助金や税金面での優遇政策に依拠した外資導入は今後、一定の制約を受けることが予想される(4)人材資本が国の外資導入力を判断する際の重要な要素になる可能性がある――ことなどが挙げられる。 ▽外資導入の伸び鈍化は悪いことではない ――外資導入の現在の情勢は中国経済にどのような影響を与えるか? これまで述べた要素と2006年の契約ベース外資導入額の伸びを考え合わせると、今年の対中投資額は引き続き高い水準を保つことが予想される。金融類を除いた投資額の伸びは大幅に上昇することは難しく、基本的な安定を維持するだけだが、下降することはないとみられる。今年の対中投資は全体として前年の水準を維持するか微増するだけだが、投資構造が改善され、より合理的になり、外資利用レベルが一層向上するものとみられる。こうしたことは具体的に次の点に現れる。 |