――中国では高等教育はすでに大衆化の段階へと入り、学生は教育サービスの購入消費の主体となっている。従って、学生を本とする制度の設計に当たっては、学生により多くの自主権を与える必要がある。 大学入学試験制度が復活して今年で30年になる。教育部のデータによると、この30年間に大学?短期大学に入学した学生は合計3600万人、合格率は1977年の4.7%から06年に56.85%まで上昇した。今年は受験生が初めて1000万人を突破。募集定員は全国で570万人に達したが、77年はわずか27万人で、21倍以上増えたことになる。 合格比率は絶えず上昇していても、関連する議論はむしろずっと続いたままだ。その最大の焦点が、いかに入試制度を改革して、より科学的かつ公平にするかである。 民間の教育研究機関である21世紀教育発展研究院は7月8日、最新の研究成果「中国の大学入学試験制度改革案」を発表した。現在のところ、公開された改革案の中では完ぺきな枠組みを備えたものだと言える。この中で、研究者たちは改革の基本的価値と目標を明確に打ち出している。具体的には(1)教育の公平を保障する(2)点数を唯一とする評価基準を改めて、学生を全面的に評価する(3)試験と選抜の多様化、多軌道化、弾力化を促進する(4)大学の自主的募集権を拡大する(5)学生の選択権を重視する(6)試験の多元的な発展を促進する――の6点を挙げた。改革案全体の設計では、学生の権利の高度な重視が際立って表れている。 この改革案は発表されるとすぐさま社会の幅広い関心を集めた。北京週報記者はこのほど、改革案を主導した北京理工大学教育研究所々長で教授の楊東平氏にインタビューした。楊氏は21世紀教育発展研究院の院長でもある。 記者 大学入試復活30年というこの特別の時期を選んで改革案を発表したのは、何を考慮してのことか。 楊氏 発表した目的は主に、公開で議論できる資料を提供し、利益の異なる層に意見を存分に提起してもらうことで、矛盾を解消するとともに、共通の認識を形成して、改革を推進するという目的を達成することだ。内容から言えば、改革案には目新しいものは多くはないが一定程度、過去の改革に関する意見を総括している。異なる点は、以前は改革への提言は非常に多かったものの、大半が比較的まとまりのないものだったが、今回の改革案は総体的なもので、改革の目標も、具体的な改革のモデルも掲げているので、実行しやすいということだろう。 記者 大学入試制度の復活が経済社会の発展に限りない活力を注ぎ込んだというのは、少しも疑う余地はない。だが同時に、制度をめぐる議論も多い。制度には一体、どんな問題が存在していると見ているのか。 楊氏 大学入試制度の存在価値は疑いのないものである。しかし、それは制度に改革は必要ないということではない。どんな制度であれ、絶えず充実させる過程が必要であり、絶えず明らかにされる様々な弊害を克服していかなければならないからだ。しかし、逆に強調したいのは、改革の必要性は制度自体を否定するものではないということだ。これが一部の人の制度の存在に対する最大の誤解である。 1度の試験で一生が決まってしまう、1枚の回答用紙ですべての人を試す、この2点が中国の大学入試制度に現存する最も顕著な弊害だ。募集する側から見れば、大学に募集の自主権が乏しい。学校や専門を選択するに当たっては、学生に十分な選択権がない。募集の地元化の傾向が顕著で、合格比率についても地域的アンバランスが深刻であり、さらに様々な名目による特別な得点追加政策も不公平の蔓延を助長している。 |