学校を卒業しても就職せず、稼がないのに出費は贅沢――。上海では「すねかじり族」と呼ばれる若者が増えつつある。中国では「子供を育てておけば老後は安心」と考えられてきたが、親孝行という伝統的な美徳は今や危機に瀕している。中国新聞社のウェブサイト「中国新聞網」が伝えた。 以前、1から10までの数字を使った次のような中国語の「なぞなぞ」があった。 「一直無業、二老囓光、三餐飽食、四肢無力、五官端正、六親不認、七分任性、八方逍遥、九坐不動、十分無用」(「九」は同音の「久」との掛け言葉) (訳)ずっと無職のまま、両親のすねをかじり倒し、飽食三昧で、手足を動かさず、五官はしっかりしていながら、肉親も肉親と思わず、わがまま放題で、ふらふらしており、じっとして動こうとしない役立たずは誰? 答えは「すねかじり族」だ。上海社会科学院が以前行った調査によると、上海に暮らす学生以外の未婚者のうち、85%が生活費の一部、または全部を親に頼っていることが明らかになった。「すねかじり族」現象は、エスカレートしつつあり、多くの関心を集めている。 「すねかじり族」に共通する特徴は、プライドの高さだ。法学部卒の若者、黄さんは「弁護士界に身を投じた大学の学友が、仕事面で独り立ちしているのを見て、法律の仕事こそ、自分の求めるべきものだと強く思うようになった」と、待遇の良かった貿易関係の仕事を辞職した。出身学部と3年の実務経験を武器に、法曹界の門をたたいたが、現実は考えていたより厳しく、職探しは失敗。心ならずも「すねかじり族」の1人に甘んじる。 大学院の修士課程を出た楊麗さんも、同じような問題に直面している。1人っ子の楊さんは、小さい頃から溺愛され、両親は娘の願いならなんでも聞いてくれた。プライドの高い楊さんは卒業後、月給1万元以上の仕事を探したが、実務経験のない新卒者にとっては「高望み」にすぎなかった。挫折に慣れていない楊さんは、失敗を繰り返すうちに「望むものは得られず、得られるものは気に入らず」の状態にはまり込み、卒業から1年になる今もまだ無職のままだ。楊さんの両親は「娘には適応の時間が必要。家としても娘の稼ぎをあてにしているわけではない」と、意外にも楽観している。 調査によると、「すねかじり族」の大部分が、20代から30代に集中している。この世代は、「1人っ子政策」の実施直後に生まれたグループにあたり、小さい頃から甘やかされ、大事されながら育っており、競争意識や責任感、勤勉節約の意識に乏しい。また、挫折から逃避する傾向がある。 同時に、「すねかじり族」の出現は、親たちの意識とも無関係ではない。子供は「すねをかじる」ことを悪いとも思わず、親の側は「すねをかじられる」ことに甘んじている。中国の親たちは常に「自分の子供が一番」と考え、子供が困難に直面れば、助け舟を出さずにはいられない。その結果、「親離れ」できない若者が現れ、「大人になりたくない」と放言し、働かず、当たり前のように他人の成果を受け取る。「すねかじり族」の出現は、必然とも言えよう。 社会学の専門家は、就職難のエスカレートに加え、1人っ子世代が増えており、「すねかじり族」は今後も拡大する傾向にある、とみる。中国が高齢社会に入れば、「すねかじり族」のもたらす社会問題が増えるのは必至だ。「大人になりきれない若者」の自立を促すには、正しい人生観、価値観を育てるだけでなく、彼らに必要な雇用機会の創出も必要となる。親に「すねかじり族」を養わせるよりは、若者に雇用機会を与え、親を養う能力を持足せることが望ましい。 「人民網日本語版」2006年6月14日 |