今年は、中日国交正常化35周年、そして中日文化スポーツ交流年です。この記念すべき年に、日本の劇団が北京にやってきて、5月12日から1カ月間にわたって、中国の劇団とともに子供たちに演劇を披露しました。 今回やってきたのは福岡を拠点に活躍するプロ劇団「道化」です。1965年に発足し、児童劇を中心に日本の全国各地の幼稚園や施設で公演を行っています。その演劇は、人形や小道具を使う人形劇の形をとりながら、役者自身もパフォーマンスをして舞台を作り上げるという独特のスタイルです。 2004年、上海の国際児童演劇祭でグランプリを受賞したのをきっかけに、今回、北京で公演を行うことになりました。 北京で披露したのは、その人気作品「消防自動車?じぷた」です。20年前に作られ、今も、年間200ステージ近く上演されている劇だそうです。 「じぷた」は、ある町の小さな消防署に勤める小さなジープの名前です。小さくて、皆からなかなか相手にされなかったのですが、ある日、突如発生した山火事でじぷたが大活躍します。体の大きなほかの車には行けない場所で、見事、火を消したのです。それで、みんなから認められ、町で有名な「消防車」となる、というお話です。 キャラクターが可愛く、ストーリーも分かりやすくて、子供に非常に向いている作品ということで、これが選ばれました。 今回の公演には、2人の中国人俳優が加わっています。中国児童芸術劇院の楊成さん(男)と付悦さん(女)です。舞台で"同時通訳"をしながら日本人役者と一緒に劇を演じました。とはいいながら、お互いに相手の言葉が分からないまま公演を行ってきたのです。 楊さんと付さんは公演の前、劇団?道化の演劇の様子をVTRで見て、台本と合わせて練習しました。そして日本の役者たちと合流してからは、たった2日間の合わせ稽古をして本番に入ったそうです。劇団?道化の役者の長島宏さんと川口佐代子さんは、その様子について語ってくれました。 「言葉ももちろんつながらないところがあるが、作品に対する思いというのは一つで…身振り手振りで交流しあって、ときどき目配せをしたり、合図をしてくれたりしたので、そんなに問題ないと思う」(長島) 「私たちも言葉が分からないし、彼らも日本語がなかなか分からない。でも通じるものはあると思う。お芝居を通してのもので、いい作品を作りたいという思いがあるので…体を使ったり、表情を使ったり、紙に書いたりして、気持ちを通じ合わせている」(川口) 中日双方の役者が一緒に舞台を作る過程で、互いに刺激になった点もありました。その中、中国人役者の楊成さんは、日本人役者の仕事ぶりにとくに印象深かったようです。 「劇団道化の方々は、北京に来た当日、空港を出たら、ホテルではなく、すぐ劇場のほうに向かった。そして、今回一緒にやる上で、まずお芝居のイメージを私に見せるため、疲れているにも関わらず、ワンステージを披露してくれた。また、これまで北京で52回の公演を行ったが、毎回、開演より2時間前に現場に着き、下準備をやる。私たち中国人スタッフは、劇団道化の役者たちのこういう、仕事に対しての真剣なところ、そして責任感の強さに、深い印象を受けた」 劇団?道化の今回の北京公演は、中日両国の役者、そして子供たちに素晴らしい思い出を残したと思います。両国の演劇分野の交流だけではなく、中日友好の更なる発展にも、大きな意義のある公演だったと思います。 「中国国際放送局 日本語部」より 2007年6月15日 |